注文住宅の失敗例から学ぶ「壁一面の本棚」設置前に絶対確認すべきコンセントと床荷重の落とし穴
「壁一面を本棚にして、自分だけの図書室を作りたい!」
これは、注文住宅を建てる多くの方が抱く夢の一つです。しかし、間取り図の段階で「ここに本棚を置く」と決めていたはずなのに、実際に住み始めてから「こんなはずじゃなかった…」と後悔するケースが後を絶ちません。
その原因の多くは、見た目のデザインに気を取られ、住宅の「構造(床の強さ)」と「設備(電気配線)」という、後から修正が困難なポイントを見落としていることにあります。
この記事では、注文住宅の失敗例を反面教師に、天井までの壁面収納を設置する前に絶対に確認しておくべき「床荷重」と「コンセント」の盲点を徹底解説します。
1. 読書家を襲う最大の誤算:床が耐えられない?「床荷重」の真実
一般的な住宅の床は、どんな重さにも耐えられるわけではありません。建築基準法では、住宅の居室の床積載荷重は「1平方メートルあたり約180kg」と定められています。
本の重さは「水の塊」と同じ
「本なんて紙でしょ?」と侮ってはいけません。本をぎっしり詰めた場合、その重さは水の塊を置いているのとほぼ同じです。
文庫本1冊: 約150g〜200g
一般的な本棚(幅90cm×高さ240cm): 本を詰めると、棚自体の重さと合わせて数百キロに達します。
壁一面の本棚となると、1平方メートルあたりの荷重が建築基準法の180kgを優に超えてしまうケースが多いのです。
失敗例:床がしなる、ドアが開かなくなる
床の補強をせずに巨大な本棚を設置した結果、床が数ミリ沈み込み、隣接する部屋の引き戸がスムーズに開かなくなったり、床材に隙間が生じたりするトラブルが発生しています。
対策:構造計算と「床補強」を依頼する
注文住宅の設計段階であれば、本棚を置く予定の場所だけ「床補強」を依頼することが可能です。合板を厚くしたり、根太(ねだ)の間隔を狭くしたりすることで、ピアノや金庫を置くのと同等の強度を確保できます。
2. 「コンセントが消えた!」電気配線計画の致命的なミス
壁面収納を設置して最も多い後悔が、「使いたい場所にコンセントがない」あるいは「本棚でコンセントを塞いでしまった」という問題です。
失敗例:Wi-Fiルーターや照明の電源がない
壁一面を本棚で覆ってしまうと、もともと壁にあったコンセントがすべて隠れてしまいます。
掃除機をかけるための電源がない。
本棚を照らすスポットライトの電源が取れない。
Wi-Fiルーターを置く場所がなくなり、電波環境が悪化する。
対策:本棚の「背板」と「配線孔」を設計する
造作本棚を検討しているなら、本棚の背板にコンセント用の切り欠きを作ったり、棚板の隙間にコードを通す「配線孔」を設けたりする必要があります。
また、将来的に本棚の中でスマホやタブレットを充電することを想定し、棚の内部にコンセントを増設しておくのがプロの推奨するスマートな設計です。
3. 「梁(はり)」と「カーテンレール」の干渉問題
天井までの本棚を作る際、図面上では見落としがちなのが天井付近の構造物です。
失敗例:エアコンやカーテンとぶつかる
壁一面を収納にしようとしたら、エアコンの設置スペースがなくなったり、窓際のカーテンレールと干渉して本棚の扉が開かなくなったりするトラブルがあります。また、マンションや注文住宅では「梁(はり)」が出っ張っていることが多く、既製品では隙間が開いてしまい、見た目が台無しになることも。
対策:展開図を必ずチェックする
平面図(真上からの図)だけでなく、必ず「展開図(横から見た図)」を確認しましょう。天井の高さ、梁のサイズ、カーテンの溜まり代(カーテンを開けた時の厚み)を計算に入れた設計が必要です。
4. メンテナンス性を考慮した「通気」の確保
壁一面を本棚で塞ぐことは、壁の通気性を損なうリスクを伴います。
失敗例:本棚の裏側にカビが発生
外壁に面した壁に本棚をぴったり設置すると、断熱性能によっては壁面で結露が発生し、本棚の裏側がカビだらけになることがあります。これは家の寿命を縮めるだけでなく、大切な蔵書を台無しにします。
対策:わずかな隙間と空気の通り道
外壁側への設置を避けるか、どうしても設置する場合は断熱材を強化し、家具と壁の間に数ミリの空気層を作る工夫が有効です。
5. まとめ:一生モノの本棚にするために
「壁一面の本棚」は、注文住宅において最高の贅沢の一つです。しかし、その夢を形にするためには、見た目の美しさだけでなく、住宅の構造や電気設備といった「目に見えない部分」への配慮が欠かせません。
床荷重の補強(180kg/㎡の壁を越える準備)
コンセントの移設・増設(本棚内部への配線計画)
干渉物の確認(エアコン、カーテン、梁)
結露・カビ対策(通気の確保)
これらを設計士や工務店の担当者としっかり打ち合わせておくことで、何十年経っても色褪せない、安全で快適なライブラリーが完成します。
あなたの理想の家づくりが、後悔のない素晴らしいものになるよう、まずは今の図面を「本棚」という視点で見直してみてください。